静 岡 県


函南町堆肥生産プラント



1.所在地:静岡県函南町丹那

2.事業主体:函南町

3.管理運営主体:丹那地域堆肥生産組合(任意組合)
               組合長 神尾隆、事務局JA函南東部指導部

4.プラント設立年次:平成6−9年度
                 丹那地域堆肥生産組合発足  平成7年11月

5.組合員:12名

6.地域の概況

 函南町は静岡県東部、伊豆半島の根部に位置し、東は箱根外輪山の分水嶺を境として熱海市と接し、神奈川県湯河原町、箱根町と県境をなしている。 丹那地区は町の南東、丹那盆地にあり、東海道本線の丹那トンネルの真上に位置し、酪農発祥の地として古くからの酪農先進地として知られている。 なお、当地域の酪農展開は時々の自然災害、政策や市場変化による困難を地域酪農家による主体的な協同活動で克服し、酪農経営確立の条件を構築してきたことに特徴がある。(表1)

表1 先進地 丹郡酪農の展開と組織対応
 明 治 期大正―昭20年間
組  織 市町村施行 函南村
農村会組織
畜産小組合結成
M.22
M.28
M.38
丹郡畜産連合会(牡牛飼育)
伊豆畜産組合
 
T.15
農地保全
(水利・災害)
人芽B場民有地編入
(御山組合 M.13)
  関東大震災 死傷7人
丹郡トンネル渇水問題
北伊豆地震 死傷321人
T.12
T.13
S.5
酪農振興
 乳牛改良
 土地利用
 防疫対策
 資金対策
 労働対策
川口氏伊豆馬産会ミ搾乳
丹郡種牡牛組合結成
基礎牛導入、牛小作、牛無尽
ホルスタイン アメリカ輸入20頭
三島種牛場
M.14
M.39
M.30〜
M.32
M.33〜44
人工受精所
基礎牛導入―畜産小組合
飼料作物栽培奨励
農地1ha乳牛1頭奨励
(地力維持)
S.4
 
S.8
市場対応 牛乳販売者 熱海箱根
三島練乳所
牛馬市関係
農牛練乳販売裁判
M.3〜
M.24
M.18〜42
M.39
牛乳道路
牛乳過剰乳価下落
農乳市乳化 伊豆畜産組合
T.4〜S.9
T.15
T.15〜S.14
教  育 獣医伝習所(綿田村)
田方農林学校(仁田私財)
花島 アメリカ酪農研修
M.17
M.35
M.32
仁田氏、川口氏貢献
田方農校県立移管
 
対置・運動 ホルスタイン導入×ジャージー種
送乳続行×農乳練乳禁止
  東京氏乳産直×牛乳過剰
畜産農民大会×農乳市乳化
 

 昭20−39年期昭40年―60年期
組  織 東部畜産農協
町制施行
25
38
東部農協57
農地保全
(水利・災害)
アイオン台風 死1人
狩野川台風 死傷55人
第1次農講区画整理66ha
23
33
39〜42
第2次農講区画整理65ha
県営畑作組合区画農道
県営農道
45〜50
48〜50
57〜61
酪農振興
 乳牛改良
 土地利用
 防疫対策
 資金対策
 労働対策
町有林種牛導入12頭
県人工受精所
草地改良事業61ha
30〜35
24
35〜42
飼料基盤整備対策49ha
緊急粗飼料
自給飼料対策
町有原種牛導入18頭
町輸入牛導入2頭
農協輸入牛導入アメリカ6頭
牛郡検定
基礎牛導入
酪農ヘルパー農協
44〜46
50〜51
53〜54
40〜56
56
58
45
56
51
市場対応 牛乳過剰受入制限
丹郡牛乳製造販売
畜産農協
学校給食
29
 
30
33
新工場落成(2次農講)
紙容器導入
粉乳工場
低温殺菌牛乳開始
プリン、ヨーグルト工場
46
49
51
57
教  育 青年、婦人組織
飼料海外県外研修
  青年海外県外研修 
対置・運動 製造販売×牛乳過剰
農協再建×農協挫折
  農講で新工場×農講生産中止 
小川政則:酪農組織支援と環境整備

 酪農家が結集する函南東部農協は昭和30年に乳牛処理加工事業を開始、46年新工場を完成、以降着々乳製品加工販売事業を拡充させてきた。 地域の酪農家数は40年代ほぼ150戸、飼育頭数2,000頭を維持してきが、厳しい情勢変化で平成12年には42戸、1,850頭に減少している。 なお、規模別では20頭以下8戸、20−40頭13戸、41−70頭18戸、71頭以上3戸と大規模化が進んでいる。 地域の農業概況は水田65へクタール、採草地64ヘクタール、畑346へクタール。農家数は専業80戸、一種兼業25戸、二種兼業119戸、1戸平均耕地面積は2.1ヘクタールである。 平成7年団体営畜産環境整備事業による堆肥利用組合が設立され、9年には第3セクターの株式会社「酪農王国オラッチェ」がオープンした。 この会社は農協50%、町25%、消費者団体25%の出費で、乳製品の製造販売、消費者との交流、家畜とのふれあいなどの活動を行っている。

7.堆肥生産プラント取り組みの経緯
 丹那地区の酪農家は函南東部農協を中心に飼料生産圃場の整備、共同の機械利用組合の整備等の取り組みを行ない、規模拡大による低コスト化、経営の安定化を図ってきた。 規模拡大により糞尿量も増加し、圃場に野積みする経営がみられようになった。 野積みされた糞尿は時に悪臭が発生し、河川への流出などによる環境問題の発生が懸念されたため、新たな段階での堆肥舎の再整備、堆肥化処理の徹底等が課題となった。 堆肥化プラントは、生協、大地の会など消費者団体との低温殺菌牛乳販売を通じて消費者との交流が活発化し、生産者の環境問題への理解が高まる中で、青年部の要望に応えたものである。 町は酪農経営の合理化と地域環境の改善を図るため、平成5年度に函南町畜産環境保全推進委員会を設置して検討を加えた結果、団体営畜産経営環境整備事業の実施となった。 堆肥生産プラントは、大規模酪農家や個別での堆肥舎整備が施設用地確保上困難な農家の共同堆肥センターとして整備された。

8.堆肥生産プラントの事業主体
 丹那地区団体営畜産経営環境整備事業の主体は函南町である。 堆肥生産プラントは乳牛1,000頭、年間排泄量14,600トン、堆肥生産1,935トンの能力がある。 施設用地造成等と処理施設整備の総事業費は6億7,947万円(補助は国37%、県18%、町23%、負担金が22%)である。 施設の管理運営主体は丹那地域堆肥生産組合で、町は生産組合に管理運営を委託している。 生産組合は堆肥生産施設を共同利用し、畜産環境改善と農業経営の安定を図ることが目的で、町内の畜産経営者で組合の趣旨に賛同する者が構成する。
 現在組合員は12名で、組合長1名、副組合長2名、理事4名などの役員会があり、事務局は函南東部農協指導部にある。 組合員は施設費の内補助金を除く自己負担金をスーパーL資金で借用(1戸平等に807万円)してこの返済金と施設の維持管理に要する公租公課、燃料費、光熱費、建物補修費、その他必要なコストと償却積立などを負担してる。 これらにあてるため毎月の乳代から各々が牛乳1キロ当たり2円の積立を行っているが、近年コスト部分は販売で補足出来るようになった。 また、組合員は毎日朝夕各自が牛糞搬入と水分調整場での攪拌を行う他、月1〜10日の製品販売の出役を行っている。
 なお、組合員は発足当初15名であったが、酪農情勢の厳しい情勢から3名が廃業して組合を辞めている。

9.施設の概要
 施設の敷地面積は15,653uであり所有者は函南東部農協である。 処理施設の所有者は町で発酵処理施設4棟3,379u、二次発酵1棟800u、堆肥倉庫1棟468u、製品倉庫1棟278u、水分調整場1棟174u、事務所1枚41u。 所有機械は堆きゅう肥運搬車2tダンプ2台、フォークリフト1台、堆きゅう肥積込機2台、袋詰め装置1式などである。 見取り図、施設概要は図1、図2の通りである。

図1 家畜排せつ物堆肥化処理施設配置図


 ●水分調整場
    1棟(ギャングネイルトラス工法)
    L=30.0m 5スパン(1スパン6.0×5.8m)
 ●ふん尿発酵乾燥処理舎
   4棟(ギャングネイルトラス工法)
   L=84.5m W=10.0m H=1.2m
   攪拌機 SKコンポ4500型
 ●二次堆積発酵舎
   1棟(ギャングネイルトラス工法)
   L=40.0m W=20.0m
   20スパン(1スパン4.0×7.0m)
 ●堆積倉庫
   1棟(ギャングネイルトラス工法)
   L=36.0m W=13.0m
   6スパン(1スパン6.0×7.0m)
 ●製品倉庫
   1棟(ギャングネイルトラス工法)
    全自動堆肥袋詰め装置設置
 ●事務所
    1棟(プレハブ)
 ●その他
    2tタンプ2台
    ホイールローダ0.8m3及び1.2m3各1台
    1.35tフォークリフト1台
図2 施設概要


10.家畜糞の堆肥化方法
 組合員12戸の乳牛飼養頭数は30〜160頭と差がある。 飼育方法も繋ぎ方式でオガクズを敷料としてバンクリナーで除糞を行っている経営と、フリーストール方式の経営があり、各個から運搬搬入される糞の水分は一定しない。 各自で原料をセンター内の貯留場に運搬、堆積し、攪拌開放型堆肥化装置の発酵槽へ副資材とともに搬入してきたが、現在は貯留場の前に水分調整場を拡充して戻し堆肥と混入後、発酵槽に搬入している。
 製造工程は(図3)のフローチャートに示すとおりである。 1,000頭の処理能力に対して実働は700頭位の稼働で、とくに冬場の稼働が低かったが、水分調整場の拡充で改善されつつある。 製造堆肥は一次発酵40日、二次発酵3.6カ月、堆積場2カ月の期間を経た完熟堆肥である。

図3 堆きゅう肥の生産・流通・利用のフローチャート


11.堆肥の生産販売
 堆肥の販売は函南東部農協を通じて注文販売されている。 販売単位はバラ売り(2tダンプ1台町内10,000円、町外12,000円)袋売り30リットル小売が500円である。 平成10年度の堆肥売上げはダンプ649台、袋1,549で、8,180,631円である。 販売開始の8年度から10年度の売 上げはつぎのとおりである。
8年度 2tダンプ 392台 袋30リットル 115袋 袋6リットル 12袋
9年度652台169袋27袋
10年度641台1,549袋43袋
 販売先は町内が約30%、三島市、長岡市など町外が70%、でイチゴ農家や露地野菜農家が多い。 町内の販売が低いのは酪農地帯で、プラントに加入しない農家からの供給が多いためである。 今後とも近隣市町の静岡県東部地域の園芸農家を中心とした需要が期待される。 なお、月別の販売実績をみると次表の通りバラは7〜9月の需要期、11〜1月の不需要期があり、この対策として袋売りを増している。 なお、販売堆肥の運搬は組合員が順番で月1〜10日間出役している。

表2 堆肥月別販売実績
年 月ダンプ台数
H8. 4   
5   
6   
718  
893262
95635 
102212 
11262 
123531
H9. 15961
24273
341245
39211512
年 月ダンプ台数
H9. 44883
539292
68  
78513 
8153123
987271.5
102924 
111531
12275 
H10. 13251
281165
3502710.5
65416927
年 月ダンプ台数
H10. 472503
5301312
6241403
749763
82061402
959583
10211902
11253022
12291221
H11. 145963
2481309
33311410
6411,54943
12.経営収支状況
 平成10年度決算書によると収入合計が10,160,371円で、予算額より約40万円少なく、支出合計は9,467,574円である。 予算額には減価償却引当金を2,000,000円を見込んだが実現せず、維持費のみでいっぱいだった。 支出の部では副材料費、電気料、修繕費、燃料費などの経費が大きい。 発足して三年を経過した初期の経営収支ではあるが、現況で町や農協の多額な補助支援にもかかわらず、組合員の出役労賃、1戸807万円の負担金借入利子、返済金などは見こめないのが実態である。

表3
平成10年度堆肥組合運営費決算書

総収入額10,160,371円
総支出額9,467,574円

差引残高692,797円


収入の部
科  目決 算 額予 算 額比較増減 備  考
前年度繰越金1,803,3611,803,3610 
堆肥売上8,180,6318,750,000▲  569,369 ダンプ 649台
     袋 1,549
雑  収  入176,3796,639169,740 式典祝儀・利息
合    計10,160,37110,560,000▲  399,629 


支出の部
科  目決 算 額予 算 額比較増減 備  考
電気料2,813,2883,500,000▲ 686,712 1ヵ月約 230,000円
燃料代563,932550,00013,932 〃   46,000円
諸材料費3,401,4523,000,000401,452 プレナ・もみがら・白土
修繕費707,198500,000207,198 スクリュー他
保険料220,930250,000▲   29,070 
保守点検料531,806500,00031,806 
水道電話料25,20050,000▲   24,800 
会議費123,791100,00023,791 
研修費3,72050,000▲   46,280 
雑費1,076,25760,0001,016,257 式典費・袋代
減価償却引当金02,000,000▲ 2,000,000 
合計9,467,57410,560,000▲ 1,092,426 

      ※差引残高は次期繰越金とする。

13.施設運営の課題
 函南町堆肥生産プラントは長い酪農の歴史をもち、酪農及び牛乳加工販売、酪農観光施設が地域経済に重要な位置を占める地域だけに、個別経営や農協経営の堆肥センターと異なり、町が施設を有し酪農家12戸の生産組合に運営管理を委託する形態がとられている。 酪農家は施設補助残の負担金をもち共同管理する仕組みである。 農協も施設敷地を町に提供し、事務局機能を受け支援をしている。 発足してほぼ四年を経過するなかで経営は軌道に乗りつつあるが収支状態は堆肥売上が維持運営コストを補う水準である。 したがい参加農家は乳代からキロ2円を支出して利子と返済にあてている。
 今後施設の経営確立と一層の効率運営を図るために考えられている点をあげると、 (1)飼養規模、飼育方式の異なる酪農家の原材料の品質の一定化システムの確立、(個別搬入時、水分調整場、発酵槽投入等段階別の品質基準の明確化と点検、ペナルティなど) (2)堆肥製造技術の向上と、更新時におけるローコスト堆肥生産方式への切替え検討(現状施設はコストが大きい。最終利用者が便える品質、価格から逆算した設備投資) (3)共同経営である生産組合の経営主体としての組織強化(処理施設投資4億円余、参加農家1戸負担807万円の巨大事業におけるマネージメント体制の確立、 (4)平等出役体制の改善、作業効率の向上、 (5)製品販売体制、堆肥販売力の強化、などであるがすでにいくつかの改善が取り組まれている。

14.施設運営の課題
 全農 営農・技術センター営農企画室技術主管(非常勤嘱託) 小川 政則

糞尿発酵乾燥処理ノ(一次発酵ノ)全景糞尿発酵乾燥処理ノへの糞ダンプ投入
写真1 糞尿発酵乾燥処理舎(一次発酵舎)全景写真2 糞尿発酵乾燥処理舎への糞ダンプ投入
糞尿発酵乾燥処理ノ内部二次堆積発酵ノ内全景
写真3 糞尿発酵乾燥処理舎内部
(攪拌機械運転状況)
写真4 二次堆積発酵舎内全景
耕種農家へ運搬する完熟堆肥の積込状況全ゥ動堆肥袋詰め装置
写真5 耕種農家へ運搬する完熟堆肥の積込状況写真6 全自動堆肥袋詰め装置


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